破天荒な海外生活ブログ

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ブログマラソン129日目 - 米原万里『マイナス50℃の世界』を読んで

ブログマラソン129日目。

 

米原万里『マイナス50℃の世界』を読んで

 

タイトルの通り、本書は真冬にはマイナス50℃を下回るシベリアのヤクート取材のレポートです。寒いのが大嫌いな私には想像を絶する世界ですが、本書に書かれている内容は本当に非現実的な世界のオンパレードです。

 

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それはただ寒いというレベルに留まらず、他の都市では通用する常識が全く通用しない世界。例えば、私たちにとって「寒くて氷が張ると滑る」というのが一般常識ですが、マイナス50℃の極寒の世界では「寒いと氷は滑らない」のが常識です。その理由の説明についてはそのまま引用させてもらいます。

 

氷そのものがすべるのではなく、氷の上を動くもの(スケートなど)と氷のまさつで熱が生じ、その熱で氷の表面がとけて水のまくができるのです。

この水のまくがすべる原因なのです。ところが、あまりに寒いと、たかがまさつ熱では氷がとけません。だから水のまくもできないし、すべることもないというわけです。

 

説明されればなるほどなぁという感じですが、頭で理解できても体験したことの無いことなので、中々想像ができませんよね。

 

また、永久凍土ならではの建設方法や凍傷の危険性、ユニークなバスの排ガスパイプやかたむいた家の謎など、極寒の世界だからこそ起こり得るできごとについて知ることができます。

 

厳しい自然の中での生活という意味では、以前紹介した『旅をする木』に共通するものを感じました。普段の生活でこのような想像を絶する世界を意識することはありませんが、私にとってはそこで生きる人々は尊敬の的です。もちろん彼らにとってはその世界が当たり前なのでしょうが、厳しい自然と向き合いながら生きるのは本当に大変なことだと思います。

 

この本を読んで、私たちが普段意識している「常識」というものが、如何に小さな世界でしか通用しないものであるかを実感しました。常識なんてものは所詮特定の環境や文化の中で生きる人達の暗黙のルールのようなものであり、ひとたびそこから外に出てしまえば常識は常識で無くなります。ただ常識に従うのではなく、その常識を疑って初めて物事の本質が分かるのかもしれません。

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