破天荒な海外生活ブログ

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ブログマラソン117日目 - 大自然を言葉で感じる – 書評『旅をする木』

ブログマラソン117日目。

 

大自然を言葉で感じる – 書評『旅をする木』

 

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 広大な大自然に囲まれたアラスカ。著者はそこに降り立ってから、その壮大で厳しい自然と向き合い、動物たち写真を撮り、先住民の人々との生活を綴っています。

 

読書をして、その言葉一つ一つに圧倒されてしまうのは、私はこうやってブログで文章を書くようになったからでしょうか。

 

様々な偶然が重なってアラスカに移り住むことになった著者ですが、やはりそれは自身が望み求めていたからでしょう。アラスカ写真集の、ある1つの写真に感銘を受けて、誰とも知れないアラスカの人に手紙を書くなど、普通の人には到底できません。さらに、感銘を受けた写真を撮った人物とその後ふとしたきっかけで出会うことになったのも、アラスカの大自然で写真を撮ることにエネルギーを注ぎ続けたことによる必然の結果のような気もします。

 

また、本書の中で何回か、人が忘れてしまった想像力について言及しています。

 

(夜の氷河の真っただ中での一節)

きっと情報があふれるような世の中で生きているぼくたちは、そんな世界が存在していることも忘れてしまっているのでしょうね。だからこんな場所に突然放り出されると、一体どうしていいのかうろたえてしまうのかもしれません。けれどもしばらくそこでじっとしていると、情報がきわめて少ない世界がもつ豊かさを少しずつ取り戻してきます。それはひとつの力というか、ぼくたちが忘れてしまっていた想像力のようなものです。

 

氷河の上で過ごす夜の静けさ、風の冷たさ、星の輝き……情報が少ないということはある力を秘めている。それは人間に何かを想像する機会を与えてくれるからだ。

 

人間の手が全く届いていない、文明から完全に遮断された世界というのは本当に少ないのでしょう。実際にそのような場所に立ったことがある人だからこそ、重みをもつ言葉だと思います。情報まみれの中で暮らす私たちの普段の生活からは、想像もできないような世界。自然と向き合うことで、人間が忘れてしまった、あるいは失ってしまった何かを感じることができるのかもしれません。

 

大自然を想像の中に描き、一つ一つの言葉を味わいながら楽しめる良書です。ぜひ読んでみて下さい。