教養のススメ - すぐには役に立たないけど、一生役に立つ
ブログマラソン344日目。
バンクーバーの図書館で借りた『池上彰の教養のススメ』。前回は「人生を複線化すること」という側面についてのみ取り上げましたが、今回は全体的な感想です。
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全体を通してこの本が言いたいことは、すぐに役立つ実用的なスキルやノウハウだけを身につけるだけではなく、人生を豊かにするような教養を身につけましょうということ。
「すぐに役に立つものは、すぐに役に立たなくなる」。多くの人が自分の専門分野だけ、あるいはすぐに仕事に直結するような小手先のスキルの取得に躍起になっていることに対して警鐘を鳴らしています。
すぐに役立つスキルも重要だけれど、もっと重要なのが変化に対応できる能力。技術的革新が目覚ましいいまの時代、最先端であったはずの技術はあっという間に廃れてしまう可能性があり、せっかく身につけてもすぐに使えなくなってしまう。
しかし専門的なスキルだけでなく、幅広い分野の「教養」を身につけ、物事を本質から考えられるようになれば、時代の変化に対応できる。一見関係無いような分野の知識を持っていることで、全く異なる視点から物事をとらえられるようになる、というわけですね。教養はすぐには役に立たないけれど、一生役に立つと。
また、本書の最後ではアメリカと日本の大学を比較しており、アメリカの一流大学がいかに一般教養を重視しているかについて述べられています。
例えばMIT(マサチューセッツ工科大学)は理系専門の大学ですが、学部で教えるのは先端科学などではなく、教養を重視しているのだそうです。先端科学何てすぐに廃れることが分かっているから、教養に力を入れるのだと。本書でもMITの先生の言葉を引用しており、
大学は何かを学ぶ場所ですが、学んだことを生かすのは社会の中です。大学で電子工学や機械工学を学び、そこで得た知識でコンピュータや自動車を作るとしても、その製品は社会に存在し、人間に使われるわけです。ならば、作り手に回る理系の人間こそ、社会と人間のことを徹底的に知り、理解し、コミュニケーションできなければダメです。だから『教養』が必要なのです。
この点はまさに日本の大学に欠けている部分ですよね。私も理系の大学出身ですが、基本的に専門分野の授業ばかりで、一般教養は本当に単位を取るためだけに存在していました(専門授業も単位を取るだけだったりしますが(笑))。
また、一般論として「入学するのが難しく卒業するのは簡単」な日本の大学と、「入学するのは比較的易しく卒業するのが難しい」アメリカの大学の風土の違いもあるでしょう。アメリカでは大学が学ぶ場所として機能している一方、日本の大学は就職予備校のような場所になっているとも述べられています。学歴という武器さえ手に入れれば就職できる(時代によって効果の大小は違えど)と。そうなると大学で何かを学ぼうという意識は薄くなってしまいますね。
就職のための学校という側面が強い日本だと、社会人になってから多くの人が思うわけです。「もっと勉強しておけばよかった!」(笑)。私もその一人です。就職をゴールにしてしまうと、どうしても学生時代は受験のための勉強に集中してしまいます。
しかし、社会人になってからでも(なったからこそ)教養は身につけられます。教養を身につける手っ取り早い方法はとにかくたくさんの本を読むことだと池上氏は言っています。本の表紙にも「四の五の言わずに死ぬほど沢山本を読め。」なんて書いてありますね。はい、四の五の言わずに読みます(笑)。
最後に池上氏の言葉を引用して終わりにします。
ムダなことに時間を費やしてください。どうでもいい分野に熱中してください。
役に立つかどうかはいっさい保証いたしません。
でも、あなたの人生がそれによって、豊かになる。
それだけは保証できます。
「今日のTED」
ジョーイ・アレキサンダー: 11歳の神童が奏でるモダンジャズピアノ | TED Talk | TED.com
たまには趣向を変えて、11歳の少年によるジャズ演奏のリンクを貼っておきます。TEDってこういうのもあるんですね。
音楽や絵画など、芸術の分野に関してはまるっきり疎いのですが、こういうのも「教養」の1つ。ちょっと思考を変えて興味を持ってみれば、新たな刺激になるかも。